第28章 みかん
泣き止んだカズヤを連れてリビングに戻ると、早速たこ焼きを焼き始めるところだった。
「よし!焼くよ!カズヤ!」
雅紀が張り切る。
「マジで!初めて見る!たこ焼き!」
「「「「「 えええ!!?? 」」」」」
たこ焼きみたことないなんて…
おまえマジ、どんな育ち方したんだ…
カズヤ…
「え?俺、なんかヘンなこと言った?」
「いいや…いいから…雅紀、がんばろうな」
そう言って、俺も焼き隊に参加する。
潤は魚介を下茹でして、一口大に切ってくれていた。
「おお!カズヤ!今日はタコだけじゃない、たこ焼きだ!」
キッチンから出てきた智くんが、にこっとカズヤに話しかける。
「う、うん…大野くん…」
「あ、やだなぁ…智って呼んでよ」
「え?でも…」
「潤も、潤でいいから。さ、言ってみて?」
にこやかに強制するのが、智くんのすごいところなんだ…
「さ、智…と、潤…」
「ん、おっけー!」
そう言って、カズヤの頭をくしゃっと撫でた。
「いいこ、カズヤ」
にこにことカズヤの顔を見る。
カズヤもほほえみ返す。
「智、好き」
カズヤが照れながら言った。