第28章 みかん
ニノの涙が収まるのを待っていると、洗面所に二人が来た。
「どうしたの…?にーの…」
「大丈夫?和…」
ふたりとも子供みたいな顔で覗いてきた。
「なんでもないよ。ニノねえ、嬉しかったんだって」
ニノを抱きしめながら、俺が代わりに答えた。
「なにが嬉しかったの?」
「カズヤがお家のこと話してくれたから」
「あ…」
「ニノは嬉しかったんだって」
「にーの…」
カズヤはそう言って近づいてきた。
「これからは、もっと話すから…」
「いいの。無理しないでいいから…」
そう言ってニノはカズヤを抱きしめた。
「話したくなったら話せばいいからね…」
「うん…にーの…」
カズヤも涙ぐんだ。
雅紀は泣いていた。
何か感じるところがあったんだろう。
洗面所に入ってきた時から目があかかった。
「雅紀…」
そう声をかけると、雅紀は俺に抱きついてきた。
「翔ちゃん…」
こいつがカズヤのこと、宝石みたいに大事にしてるのはわかってる。
雅紀も嬉しいんだろう。
あれ、おかしいな。
前がよく見えないや。