第26章 ホワイト
深夜、いつまで経ってもカズヤが部屋から出てこないから、勉強部屋まで行ってみた。
カズヤは部屋のベッドでうたた寝していた。
手に参考書を持ったまま。
相葉さんと翔さんはもう先に寝てしまっていた。
珍しく、今日は一階で二人で寝てる。
参考書を取って、勉強机に置く。
かずやにタオルケットを掛けて電気を消した。
部屋を出ようとしたとき、寝言が聞こえた。
「かあさん…」
その時の俺の気持ちをどう表したらいいか…
その切ない呼びかけが、どれだけ俺の心を締め付けたか。
カズヤの傍にもどると顔を覗きこんだ。
涙が一筋こぼれ落ちていた。
今までついぞ、カズヤの口から本当の母親を家族を求めるような言葉は出てこなかった。
でも心の奥底では激しく求めているのは、皆わかってた。
でもカズヤは一度もそれを口にしなかった。
わかっているから。
とうに捨てられていることが。
こいつの心を思うと痛かった。
切なかった。
癒してやりたかった。
涙が出た。
後から後から出てきて止まらなかった。
自分と重なった。
幼いころ、両親に顧みられることがなかった自分と。