第25章 ベルフラワー scene2
「…バーカ…」
突然大野さんが言った。
「翔くんさ、そんなに自信ないの?」
「はぁ?」
「正攻法で潤に言えばいいじゃん」
「な、何を…」
「なんで好きだって言えないんだよ」
「ちょ、大野さん…」
大野さんの服を引っ張ったがやめようとしない。
煽ったらダメなのに…
「自信ないから、こんな汚ねーことやるんだろ?」
「なんだと?」
翔くんの眼に怒りが宿った。
「自信がなくてあたりまえだよな。俺と潤にはもう基礎ができてるんだから」
「…なんだよそれ…」
「俺と潤は愛し合ってるっていう基礎があんの。だからどんなことがあったって、ブレないんだよ」
「ハッ…ばかじゃねえの…」
「現に、翔くんがかき乱しても、俺達元に戻ったよ?見ててわかるだろ?」
「本当にそうなのかよ?潤…」
「え…」
「俺の目をみて、すっかり元どおりだって言えるのかよ…」
そう言って、座った目を俺に据えた。
「うん…だって…俺達には基礎があるから…」
大野さんが毎晩ダンスのレッスンに誘ってくれたのはこういうことだったのかもしれない。
基礎、基本に戻る。