第25章 ベルフラワー scene2
その日から毎晩レッスンをするようになった。
二人だけでずっと踊った。
スタジオは22時までだったから、レッスンできない日もあった。
そんな日は大野さんちで軽く踊った。
暫くそんな日々を過ごしていたら、俺達の関係はすっかり以前に戻っていった。
身体を動かして汗をかくと、俺のなかに淀んでいた澱みたいなものが出て行くようだった。
翔さんにつけられた傷はほとんど癒えた。
毎晩レッスンが終わると、大野さんが愛してくれたから。
する日もあったけど、しない日もあった。
でも毎日身体に触れてくれた。
毎晩、毎晩。
快感はなくても、感じた。
大野さんの心を。
ただひとつ。
俺はまだ”愛してる”って言えなかった。
俺と大野さんはどこにいくのも手を繋ぐようになった。
二人で出かけるときも、仕事に行くときも。
それを主張する必要はなかったんだけど、もう習慣になった。
いろんな人が好奇の目でみたけど、俺と大野さんは気にしなかった。
関係が公然になっていった。
でもあの人だけは。
翔さんだけは今だに認めない。
笑顔の中の冷ややかな目で俺たちを見ていた。