第25章 ベルフラワー scene2
「先生も言ってたろ、正しい位置でって…」
「わかってるよ…」
それでも顔を歪めながら、一生懸命バーと戦ってる。
しばらくするとほぐれてきて、さっきよりもマシな姿勢になった。
俺はバーに戻って、今度は逆の足をバーに乗せて解した。
海外まで行って学んだのは、結局基礎の大切さで。
ただ踊ればいいってものじゃないってことだった。
ダンスで飯を食っているトップの人たちは、結局のところはバレエのレッスンをやっている。
基礎をやっていないと、この先踊れない。
身にしみてわかった。
だから基礎レッスンの量と、筋トレを増やした。
でも大野さんは個展があったから、暫くなにもできなくて。
顔がころっとしてきたから、実は焦っていた。
バーから身体を外した。
音楽に合わせて身体を動かす。
最初は身体を揺らすだけで。
身体を温める。
大野さんもバーから離れて、最初は足を擦っていたが、身体を動かし始めた。
「潤、アレ、覚えてる?」
大野さんはそういうと、いたずらっぽく笑った。
アレとは、大野さんが俺のために振りつけてくれたダンスのことだ。