第25章 ベルフラワー scene2
やっとここで翔さんの企みがわかった。
最初から翔さんの目的は、俺だったんだ。
「あんた、途中から出てきて潤のこと盗っていったんだ。俺のほうが先に潤のこと好きだったのに」
傲慢に言い放つ。
「でも、潤は俺のこと選んだよ。だから大人しく身を引きなよ」
そういうと翔さんは俺の腰を引いて抱きしめた。
俺はもう抵抗できなかった。
どのみち、嫌われてしまう。
でももしここで俺が翔さんから離れたら、翔さんは大野さんになにかするだろう。
大野さんを守れるなら、いい。
俺は目を閉じて終わりの時を待った。
「潤…」
大野さんが呼びかける。
こんな呼びかけを聞けるのもこれが最後だ。
「潤…おいで」
いつもどおりの優しい声だった。
驚いて振り返った。
大野さんはいつもどおりの微笑みを浮かべてた。
俺の方に歩み寄ってくると、俺の手を取った。
「潤は俺だけのものだから」
俺の顔を見て言った。
「俺も潤だけのものだから」
そう言うと俺を立たせた。
そのまま俺の手を引いて楽屋を出た。
「大野さん…」
俺が呼びかけると、こちらを振り返ってまた微笑んだ。