第25章 ベルフラワー scene2
収録の合間に、セットをチェンジするから休憩が入る。
普通は前室に入って、ゲストの人たちと喋りながら過ごすんだけど、今日はそんな気にもなれなくて。
一旦楽屋に引き上げた。
一人になりたかった。
ソファに座って、膝を抱えた。
翔さんのあの挑戦的な目。
大野さんはどう思ったんだろう。
何にも言ってなかったけど。
もしかしてわかってしまったんじゃないか。
スマホにメッセージがきた。
『収録はじまるって』
ニノからだった。
頼んでおいたから知らせてくれた。
俺は楽屋のドアに向かって歩いた。
突然ドアが開いた。
翔さんが入ってきた。
俺をまた突き飛ばした。
今度は踏ん張った。
睨みつけると、また冷たく笑った。
「俺…大野さんが好きなんだよね…ホントは」
信じられないことを言った。
「な…に言ってんの?」
「そのうち、ヤっちゃうかも」
「…え?」
「オマエみたいにヤっちゃうよ?」
気が遠くなりそうだった。
その後、どういう会話をしたのか覚えていない。
収録も上の空だった。
なんとか台本どおりにこなすのが精一杯で。
足がずっと震えていた。