第25章 ベルフラワー scene2
その日は大野さんは俺をぎゅっと抱きしめて寝てくれた。
次の日、俺が仕事があったから先に起きだして家を出た。
大野さんは起きなかった。
俺はあえて起こさなかった。
何を喋ればいい。
翔さんのことなんて言えない。
言ったらおしまいだ。
俺は口を噤むしかない。
きっと翔さんはそこまで計算済みだと思う。
だからあんなことできたんだと思う。
痛む身体をなんとか動かして仕事をこなした。
仕事が終わって、スタジオの出口に行くと、大野さんが居た。
「……どうして?」
大野さんはにこっと笑った。
黙って俺の手を握った。
「だ、だめだよっ…」
「いいから。おいで」
そう言って俺を連れて歩き出した。
俺の車まで、手を繋いで歩いた。
「どうしたの…?」
「ん…潤と一刻も早く会いたくなったの」
そう言って握った手をぎゅっとしてくれた。
その日は大野さんの家へ行った。
家に着くなり、大野さんは俺を抱きしめた。
俺も大野さんにしがみつくようにそれに応えた。
そのまま俺は大野さんに抱かれた。
まだ痛かったけど、気持よかった。