第25章 ベルフラワー scene2
温かい手が俺の頬に触れた。
目を開けると大野さんがいた。
「潤…」
悲しい響きだった。
俺はまだキッチンで、裸で。
もう外は暗くなってた。
俺は無理やり笑顔を作った。
「おかえり大野さん。待ってた…」
そこまで言ったら、喋れなくなった。
「ご、めんなさ…大野さ…」
大野さんは黙って縛られてた手を解いた。
タオルで俺の後ろを拭いてくれた。
目を閉じて大野さんの手に委ねた。
「…誰にこんなことされたの…?」
大野さんがそう呟いた。
俺は答えられなかった。
大野さんが俺を抱きしめてくれた。
「ごめんな…一人にして…」
優しさに涙が出た。
怖かったよ…
痛かったよ…
大野さんに抱かれたかったよ…
俺は自由になった手で大野さんに抱きついた。
「ごめんなさい…」
いくら謝っても、謝り足りない気がした。
「潤は…悪くない…」
そう言って一層強く抱きしめてくれた。
「お願いだから、誰にやられたか言って?潤…」
振り絞るような声にも、結局俺は答えられなかった。
「俺に言えない相手なの?」
俺は首を振るしかなかった。