第23章 レイヴンscene1
事務所の車で帰る車中で、潤は手を繋いでくる。
ひんやりとした手だった。
俺は体温が高いから、二人で足して割ったらちょうどいいねっていつも話していた。
心地いい冷たさで。
「雅紀、やっぱり熱いね、手」
そういっていたずらっぽく微笑む。
「体温高いとガンになりにくいからいいだろ?将来心配ないから」
そういうと、じじくさいと言って潤は笑った。
移動車を降りて、マンションまで少し歩く。
手を繋いでぶらぶらしながら帰った。
部屋に入ったら、潤が暑いと言ってシャワーに入った。
俺はスマホをチェックした。
翔からメッセージが来ていた。
『今日はごめん』
なんで謝るのか。
俺を思うあまりの暴走をなんで怒れるのか。
『今から、会える?』
思わずそう打っていた。
はっとして、すぐに消した。
会えるはずなんてない。
俺には潤が…
潤との時間がある。
スマホの電源を落とした。
今日はなにも考えたくない。
ソファにドカッと座った。
そのまま背もたれに頭を乗せて、天井を向く。
翔の顔が脳裏に浮かぶ。
違う。
俺が一番愛しているのは潤だ。
翔じゃない…