第23章 レイヴンscene1
収録を終えて楽屋に戻ってくる。
着替えていると、潤が俺の服を持って待っていた。
「あ、ごめんね潤」
「ううん。さ、これ着て早く帰ろ?」
そういうと微笑んだ。
俺は潤から服を受け取ると、袖を通す。
終わると、潤が俺の髪にクシを通してくれた。
「どうしたの?珍しい…」
笑いながらそう言うと、潤が照れたように言った。
「だって、雅紀、いつもぐしゃぐしゃだよ?帰り。一緒にいて恥ずかしいよ…」
そう言って照れを隠した。
鏡に向き直ったら、翔がこちらを見ていた。
冷たい瞳で。
俺は見ないふりをした。
楽屋を出るときは、潤と手を繋いで出る。
これもいつものことだから、誰もなにも言わない。
「じゃあ、おつかれ様~。また来週ね」
そう言って楽屋を後にする。
今日の収録は疲れた。
セットチェンジの為に前室にひっこんで、皆としゃべっていたら翔が後ろから手を繋いできた。
皆からは見えない位置だったが、ヒヤヒヤした。
何度も離そうとしたが、離してくれなかった。
でも、イケナイことをしている背徳感が沸き上がってきたのも事実で。
心のどこかでそれを楽しんでしまったりもした。
諦めて握り返した手は、とても熱かった。