第23章 レイヴンscene1
鍵を開けて部屋にはいると、翔はまた手を握ってきた。
手を引いてベッドルームに入る。
「え?もう…?」
翔は戸惑っている。
「もう、欲しいな…翔が」
そういうと、俯いた。
恥ずかしがっているその姿にそそられる。
「じゃあ、シャワー浴びておいで?」
そういうと、ほっとした顔をしてベッドルームから出て行った。
俺はベッドに横になる。
昨日、潤をあれほど熱く抱いた身体で、今日は翔を抱く。
俺の思考は停止していた。
翔から情熱的に求められて、拒否できなかった。
楽屋で押し倒されて、ひとつになったときから、抗えない。
涙を流しながら俺とひとつになって喜んでいる翔を突き放せないでいた。
それから月に一回、翔と俺は密会している。
メッセージのやりとりは毎日だ。
別に愛の言葉をささやくわけでもない。
潤に見つかった時のことを考えているんだろう。
そこまで俺に惚れている翔を手放すことができない。
冷たく突き放すこともできない。
手の中に入れて保護したい。
そんなことばかり思っていた。
ずるいと思う。
嫌なやつだと思う。
でも、この関係を断ち切れない。
翔の作り出す泥沼にズブズブと嵌っている。