第23章 レイヴンscene1
翌日はオフだった。
だが俺は仕事だと言って家を出た。
「ホント、雅紀だけ忙しいね。最近…」
そう言って潤は寂しそうに笑った。
「ごめんね。寂しい思いさせて…」
「ううん。大丈夫。気をつけてね」
そう言って最愛の人は俺を送り出してくれた。
車を走らせて、表参道まで行く。
俺達の家からは遠い。
大通りを走って小道に入ると、もう喧騒が和らぐ。
路駐して待っていると、窓を叩く人があった。
ウインドウを下げると、にこっと笑った。
「ごめん、待った?雅紀」
そう言って翔は、助手席に乗り込んできた。
「ううん。今ついたところ」
「そっか。良かった」
そういって、俺に顔を近づけてきた。
俺は顔を向けて、それを受ける。
柔らかい唇が俺に触れた。
軽い水音を立てて、唇は離れていった。
「じゃ、行こうか…」
そう言って車を出した。
西新宿のヒルトンホテルに入った。
予約してあった名前を告げると鍵が出てきた。
そのままエレベーターに乗り込む。
翔は俺の手を握ってきた。
誰にも見えないよう、手を握り返す。
翔の頬が、赤く染まる。