第23章 レイヴンscene1
ハッシュドビーフは美味しくて。
潤は手抜きだというが、俺には充分だった。
ルーの他にも隠し味をしてあるらしい。
それに簡単なサラダもついてた。
「潤、お嫁さんにいけるよ…」
「なにバカなこと言ってんの…」
笑って流された。
食べ終わったら、ワインが出た。
ハッシュドビーフに使った残りだそうだ。
「ホントは食事中に出せばよかったんだけど…ぬるかったから」
そういってグラスを渡してくる。
透き通った綺麗な赤だった。
明かりにかざして眺めていると、潤も同じことをしている。
「綺麗だね…これ…」
そういってふたりでグラスを見つめた。
口に含むと、苦味とほんのりとした甘み、そしてアルコールが口に広がった。
「結構良いワインなんじゃないの?」
「そんなことないよ?俺んちにあったやつだから」
それは高いんじゃないか…?
そう思ったけど、聞かないことにした。
潤が俺のためにやってくれたことだ。
俺が美味しく頂けばいいと思った。
「ありがと、美味しい。潤」
潤は心底嬉しそうに笑った。
俺もその顔を見て、すごくうれしくなった。
愛おしくなった。