第21章 ラズベリーscene3
見送ると、母さんが俺のほうを恨めしげに見た。
「なんで黙っていたでござるか」
「ごめん…」
「そんな大事なことも言えない親なの?」
「ううん。そうじゃなくて…」
「お父さんはともかく、母さんには言えなかった?」
「ごめん…」
「大野さんから聞いたよ。この人しかいないって思ったんだって?」
恥ずかしい…逃げたい…
「いいじゃない。大野くん。なんで隠すの?翔が選んだ人でしょう?」
「母さん…だって、俺ら男同士だよ?言えないよ…」
一気に言って、その自分の発した言葉に傷ついた。
男同士。
なんにも生み出さない。
生命の摂理に反してる。
「…翔が言えなかった気持ちもわかるけど…それでも私はあなたの母親なのよ…?」
「母さん…」
「翔が犯罪者になろうが、カタワになろうが、私は永遠に翔の母親なのよ…」
「母さん、それ放送禁止用語だよ…」
「大丈夫でござる、言葉の差別のつもりはない」
母さんはVサインをした。
「だから、あなた達を差別するつもりもない」
きっぱりと言い切った。
「お父さんはね、暫く黙っていよう…時間かけていこう」
そういって微笑んだ。
「愛する息子の決めたことだ。母さん応援するよ?」
そういって俺の頭をぐしゃっと撫でた。