第21章 ラズベリーscene3
「お父さんは頭固いから、言わないでいいわよ」
ちょっと、母さん…!
「良かったわ~。これで大野さんの奥さんともっと仲良くなれますわね~」
そういうと嬉しそうにはしゃいでいた。
「大野さん、あれですわよ。今はやりのびーえるってやつですよ」
俺は一気に脱力した。
そりゃ、変わった母さんだとは思ってたけど…
うちの母さんぶっ飛んでる…
「翔、その点滴が終わったら帰っていいって言われたから、とりあえず今日は家へきなさい」
俺は頷いた。
本当は智くんに会いたい。
会ってぎゅっと抱きしめて貰いたい…
でも、今は無理だ。
事務所に連絡しなくちゃ…
マネに怒られるだろうな…
「翔くん、私達はこれで帰るから。智には私から連絡しておいたから」
「あ、ありがとうございます、お父さん、お母さん」
俺がそう言うと、母さんがずっこけた。
「翔…もうそこまで行ってるわけ…?」
「あ…この前、ご挨拶に伺って…」
「本当にもう…言いなさいよね…」
母さんはそう言って、智くんのご両親に頭を下げた。
「申し訳ありません。近々、きちんとご挨拶に伺いますので…」
「いえいえ…お気になさらず…」
そう爽やかに言い残して、ご両親は帰っていった。