第21章 ラズベリーscene3
家に帰ったら智くんが、ソファで本を読んだままうたた寝していて。
何を読んでいるのかと思ったら、ニーチェで。
いきなりこんなの読んで大丈夫なのかと心配になる。
本にしおりを挟んで、ローテーブルに置いておく。
薄掛けを持ってきて智くんに掛けた。
俺のことで、こんなに周りに変化が出ている。
なんだか申し訳ない気持ちにもなる。
でもこれはどうしようもないことで。
別に父さんが事務次官を目指していたのじゃないことはわかってる。
でもそういうお鉢が回ってきたのだからしょうがない。
だけど、それはこれだけ俺の周囲に影響を及ぼしていて。
智くんがすやすや眠るのをじっとみる。
愛おしいこの人の負担にだけはなりたくなかった。
でもこの人の傍から俺は離れられなくて。
愛されたくて。
わがままなのかもしれない。
でも、一緒に居たい。
布団からはみでた手を握る。
この先への不安が拭い切れない。
一体、俺にどんなことが待ち受けているのか。
無人島に一人残された気分になった。