第21章 ラズベリーscene3
「翔がとんでもない女とつきあってたら、世間じゃ大々的に報道されるからね。そしたら私達に影響でるわよ」
そういって、醤油を少し鍋に入れた。
「ま、でも心配はしてないわよ?」
そう言って俺の方を見た。
「何か、悩みがおありか?」
少し冗談めかして聞いてきた。
「いや、ござらぬ…」
「さようでござるか…」
しばらく二人で見つめ合う。
根負けしたのは俺の方だった。
「かなわないなぁ…母さん」
にやっと笑う。
「親は、何歳になっても親でござるよ?」
今度は味噌を少し入れた。
「それを忘れないでいるでござるよ?翔どの?」
母さん、それ何鍋だよ…
「わかった…ありがとうでござる…」
そう言うと、俺は手をひらひらと振って家を後にした。
父さんの昇進は事実だ。
これから実家がどうなるのか。
俺の周りがどうなるのか。
デジタル推進のトップになったとき、俺の周りは俄に騒がしくなった。
仕事も増えたのは事実だ。
これが総務省のトップとなったら…
一体なにが起こるんだろう。
今はまだわからない。
ぎゅっと手を握った。