第21章 ラズベリーscene3
「母さん」
声を掛けると、母さんはこちらを見た。
びっくりした顔をした。
「どうしたの?連絡もなしに」
コショウ入れと同じ顔をして言った。
今日は持ってくるの忘れてしまった。
「ごめん。でも夕飯いらないから。すぐ帰るし」
「あ、そう?なにか用でもあった?」
「父さんのこと…」
「ああ…内示でたのよ」
「やっぱりそうなんだ…」
「まあ、無理だとは言われてたのにね。なんでこんなことになったのやら…母さんにはわからないわ…」
そう言いながら鍋の中をかき回す。
「何か、変わるかな…俺達」
「え?」
「いや…総務省のトップって言ったらさ。やっぱりなんか変わるのかなって思って」
「大臣じゃあるまいし…変わらないわよ」
母さんは事も無げに言うけど。
官僚の奥さんやってる人だし、大学の教授だし、やっぱりどこか普通の人とは感覚が違って。
「変わらないかな…」
「アンタにスキャンダルがある方がよっぽど私達に影響出るわよ」
そう言って母さんは笑った。
どきっとした。
「お父さんは公務員だから食いっぱぐれないけど、翔は芸能人だからね」
そういうと味見をした。