第21章 ラズベリーscene3
帰りの車中は、ずっと智くんは起きていた。
車に乗るとすぐ寝ちゃうのに。
ずっと何か考えてる。
こんなに考えこむ姿は初めて見た。
それだけこれは俺達にとって、深刻な問題なんだ。
わかるけど…
なにか対岸の火事のように俺は考えていた。
だって、俺は智くんさえ居ればいい。
俺の家族なんて関係ない。
心のどこかでそう思っていた。
でも智くんは違う。
ああいうご家庭だから、俺とは根本の考え方が違うんだ。
それに智くんにとって、家族は切っても切り離せない存在で。
だから俺のことをその一員にしようと、今日は挨拶に行ったのだ。
とても嬉しい。
死ぬほど嬉しい。
結果受け入れて貰えたし、お父さんとお母さんから優しい言葉も貰えたし。
これで気兼ねなく、実家と行き来できるし。
ただ…俺の家族は…
正直、難しいと思う。
俺に子供を作ることを望んでいる。
これは智くんには言えないけど。
だから本当は触れたくない。
だから心がそれを考えることを拒否して逃げまわってる。
それに父さんの昇進。
俺は気分が落ち込むのを振り払うようにアクセルを踏み込んだ。