第21章 ラズベリーscene3
「翔…」
「うん?」
「俺さ、翔ちゃんの家族に受け入れられなくても、翔ちゃんさえ居れば平気だから」
「うん…」
「だからって今は、引っ掻き回すつもりもないから…」
「うん…ありがとう…」
「ゆっくり、二人で考えていこ?」
そういって、俺の顔を覗きこんできた。
俺は微笑んだ。
智くんも微笑んだ。
握った手にぎゅっと力を入れた。
「大好きだよ…翔ちゃん」
「うん…俺も大好きだよ…智くん」
そういって目を閉じかけたがやめた。
智くんは立ちあがって、いろいろと俺に見せてくれた。
卒業アルバムとか、昔好きだったマンガとか。
それは智くんを作ってきたものの一部で。
俺はどれも愛おしい思いで眺めた。
ポケットアルバムから、まだ3歳くらいの坊主頭の智くんの写真がこぼれ落ちてた。
俺はそっとそれを拝借した。
可愛らしく微笑むその写真をどうしても手に入れたかった。
でも恥ずかしくて言えなかったから、借りた。
借りたんだからな。
俺の胸ポケットがあったかくなった。