第21章 ラズベリーscene3
「無理はしないよ…翔ちゃんが家族と険悪になるのなんて、俺だって嫌だし…」
聞いたことないような口調だった。
これが家族の前で見せる、智くんの姿なんだ。
「ただ、けじめはしっかり付けたいだけなんだ…ただ、それだけなんだ…」
「智くん…」
俺は智くんの手を握った。
「ごめんね。智くん…」
「翔ちゃんが謝ることじゃないよ…」
そう、これは俺たちの問題なんだ。
「ふたりとも、今は時期じゃないだけだから…私達も、できるだけのことするつもりだからね?」
お母さんは優しく言ってくれた。
「たまには頼りなさいよ?智、翔」
お母さんは俺を呼び捨てにしてくれた。
家族の一員として迎えてくれたんだ。
嬉しくなった。
涙が出そうだった。
「はい…ありがとうございます…」
お母さんは、にこにこして、頭を優しく撫でてくれた。
それから暫く智くんの部屋で二人で過ごした。
もう住んでいないから、棚には空きがあったりするけど、ここでずっと智くんが過ごしたのかと思うと、なんだか感慨深い。
智くんはずっと何かを考えこんでる。
俺と手を繋いだまま。
俺もその横でずっと考えてる。
これから先のことを。