第21章 ラズベリーscene3
「しばらく、翔くんのお家には伏せておいたらどうかしら?」
お母さんはマグカップの縁を撫でながら言う。
「家は、智のお嫁さんが男だろうと女だろうと構わない、そんな変わった家だから。でもそれって世間とは大きくずれてることだし」
カンとマグカップを爪で弾いた。
「ごめんなさいね。私やお父さんはゲイとかに偏見ないし。息子がそうなったとしても受け入れようねって話してたし。変わってるのよ。家」
そう言って笑い出した。
「翔くんのお家とは違うと思うの」
「はい…そこは違うと思います…」
無理やり見合いをさせられたこともあるくらいだから…
「だから、家では遠慮しないでいいからね。あ、でもやらしいことは帰ってからしてね?」
そういうとふふっと笑ってくれた。
俺は真っ赤になった。
「けして、話すなとは言わないけど、今は時期じゃないと思うの。智」
お母さんは智くんをまっすぐ見た。
「あなたの気持ちはわかるけど、あなた達の関係は、決して世間の皆様全員に認めて貰えるようなものじゃないから」
ぐっと智くんが奥歯を噛みしめる。
「あなたが、そういう嫌な偏見のない子に育ってくれて、おかあさん、嬉しいよ?」
そういうと、智くんとお母さんは少し見つめ合った。
照れたように智くんが目線を外すまで。