第21章 ラズベリーscene3
香りのいい紅茶に少し心が落ち着いた。
お母さんはそのまま、テーブルの反対に座った。
「翔くん…ご家族のことだけどね」
「あ、はい…」
「私達はすごくシビアに考えてるの。あなたのお家と、家は違うから」
「いえ、そんなこと…」
「さっき、お父さんも言ってたけど、近々の発表がもし本当だったら…」
「え?」
「あなたのお父様、事務次官になるのよ?」
「あ…」
なんとなく、母さんが言ってたような気がした。
そういえば妹も。
今日の挨拶のことですっかり失念していた。
「でもそんなこと、俺らには関係ありませんから」
そう言ってはみたものの、口調に硬いものが出てしまった。
「翔くん…智。そんなものじゃないのよ…?わかるでしょ?」
「うん…」
智くんが低い声を出した。
聞いたことのない響だった。
苦しそうな、悲しそうな。
どうして俺、普通の家に生まれなかったんだろう。
智くんにこんな声を出させてしまうなんて…
智くんが俺の肩に手を載せた。
振り返ると、深い色を湛えた瞳でこちらをみていた。
その色をみていると、俺は無性に悲しくなった。