第21章 ラズベリーscene3
ごほんと咳をすると、お父さんが座布団に座った。
「いつ以来かな?去年の大阪かな?」
去年のデジタリアンのツアーの時、大阪がちょうど智くんの誕生日だったから、ご両親が来ていた。
それ以来ぶりだ。
「そうですね。去年の大阪以来です」
にこっとお父さんは笑った。
頭はハゲているけど、笑った顔が智くんそっくりで。
メガネはなぜか薄いグレーの色付きメガネで。
「そうか…」
そういうと、話すことがなくなったようで、黙り込んだ。
お茶を啜る。
「とうちゃん。改めてあいさつさせてもらうね」
智くんがあぐらをかいていたのを、正座に直した。
「とうちゃん、かあちゃん。こちらが、俺の奥さんの櫻井翔さんです」
お父さんがお茶を噴いた。
「まっ…お父さんたら…」
そう言ってお母さんはフキンでお父さんの口を拭いた。
「かあさん、それフキン…」
お父さんも気づいたようだった。
「あら、ごめんなさい」
おかあさんはふふっと笑った。
「ちょっと落ち着きなさいよ。お父さん。せっかく智たちがきちんとしてるのに…」
「ああ、そうだな…」
お父さんは色付きメガネをくいっと上げた。