第21章 ラズベリーscene3
「ふふ…そうね、智にしては本当に上出来よ。もったいないくらい。さ、上がって?」
お母さんは俺にスリッパを差し出してくれる。
「…ありがとうございます。お邪魔します」
そう言って俺は上がった。
上がると後ろを向いて、靴を揃えた。
ついでに智くんのも揃えておいた。
振り返ると、智くんとお母さんが微笑んでこちらを見ていた。
「え…?なにか…?」
「ううん、なんでもない。行こう」
そういって智くんが先に歩き出した。
お母さんもまたふふっと笑って歩いていく。
なんかおかしなことしたかな…?
廊下をまっすぐ進むと、右手に座敷があった。
そこに通された。
「ええ?かあちゃんここなの?」
「当たり前じゃない。大事なお客さんなのに」
そう言って智くんのお母さんは頭をひっぱたいた。
「痛って…」
そういうと首をすくめた。
おかしくなって、少し笑った。
座敷では上座に座らされた。
恐縮したんだけど、お母さんは譲ってくれなくて。
ちょっと待っててね、というと座敷を出て行った。
「っはぁ~…」
思わずため息が漏れる。