第21章 ラズベリーscene3
智くんの道案内で、着いた。
そこは白い一軒家で。
「ここに車入れて?」
玄関の前のスペースに車を入れた。
エンジンを止めると、緊張が倍になって襲ってきた。
どうしよう。
また手汗が噴き出してきた。
トランクから、紙袋を取り出す。
「翔ちゃん?どうしたの?早くおいでよ」
智くんは気軽に家に入っていく。
「ただいま~…かあちゃん」
智くんの声が聞こえる。
「智、おかえり」
女性の声が聞こえる。
これが智くんのお母さんだ。
玄関から智くんが顔を出した。
「翔ちゃん?おいでよ」
「う、うん」
中に入ると、玄関の上がり框でお母さんが立っていた。
「あら、翔くんいらっしゃい。お久しぶりね」
にこやかに笑って迎えてくれた。
今日は黒のタイトスカートに白のカットソーという地味な格好だった。
「お久しぶりです。あの、これ…」
俺は手土産を渡した。
「あら、花園饅頭。好きなのよね…ありがとう。翔くん」
予め智くんにリサーチしておいた。
「やっぱり、気が利くのね。偉い子だわ。うちの智とは大違い」
智くんがふふんと偉そうな顔をする。
「だから言ったろ?自慢の奥さんだって」
「ばっ…!」
ばかと言いかけて、飲み込んだ。