第21章 ラズベリーscene3
中央道を降りると、国道に出る。
暫く上ると、左折して小さめの幹線道路を走る。
ここまでは聞いていたのでわかったが、この先がわからない。
隣に眠る人を起こす。
「智くん、起きて?」
「んにゃ…」
妙な声を上げて、俺の愛しい人は起きる。
「ここまで来たよ?道案内よろしくね」
「あ、もう三鷹ついたのか…」
目を擦りながら車窓を確認している。
寝ぐせがついている。
俺は手を伸ばしてそれを撫で付ける。
「あ、ありがとう。翔ちゃん」
頬を染めてこちらを見る。
目が合うと、ふふっと笑う。
それを見て、俺は落ち着いた。
俺もふふっと笑った。
智くんは、嬉しそうな顔をして俺の手を握った。
幸せだった。
「もうちょっとだから、運転よろしくね?翔ちゃん」
「うん。智くん、わかったよ…」
智くんの手は温かくて。
その体温を感じていれば、俺は安心できた。
ずっと手を握っていて欲しい。
この先もずっと。
…今日はなんだか思考が飛躍している。
これから起こることへの不安からだろうか。
できれば逃げ出したいほど緊張している。
でも、これは智くんが決めたことだから。
俺もきちんと向き合わなきゃならない。
車は三鷹の街をひたすら走る。