第21章 ラズベリーscene3
ハンドルを握る手を何度も拭いている。
手汗が半端無く出ている。
中央道の下りは空いていて。
道路の前の景色もよく見える。
隣には大野さんがいて、爆睡している。
いつも彼のこういうところが好きで。
でも今日はいらっとして。
心を落ち着かせるためにカーラジオを入れる。
いつもの音楽じゃ、今日の気分に合わなかったから。
ユーミンの「中央フリーウェイ」がかかった。
タイムリー過ぎて涙が出た。
こんなことで涙が出るくらい、俺はナイーブになっていた。
俺、櫻井翔。
今日は試練の時なのです。