第3章 きみどりscene2
「かーず…?」
寝室のドアを開けると、かずは布団に潜り込んでしまった。
「なんか、ごめんね」
もぞっと布団が動く。
「恥ずかしくなくなったら、リビング来て。ご飯たべよ?」
そういうと寝室を出る。
昔から、かあちゃんには驚かされることがあるけど、今日ほど驚いたことはなかった。
あんな短い電話で、俺とかずの関係をいち早く見抜くなんて…
こわい。かあちゃん。
こわい。女。
食事が入ってる方の袋をあけ、中身を取り出そうとするとメモが入っていた。
『和くんを大事にね』
……認めてくれるんだ。
そうだよな。
よく考えたら、男同士だよな。
親だったら反対するもんだよな。
変なのうちのかあちゃん。
ふふっと笑いがこぼれる。
「なに笑ってんのよ」
むすっとした声のかずが寝室から出てきた。
メモを見せると、大きな目をひらき、そして俺をみる。
「俺達の事、応援してくれてるみたいだよ?」
その時のかずの顔をなんと表現したらいいか。
嬉しいような、切ないような。
儚げで、今にも崩れそうで。
俺には文才がないから上手く描ききれない。
一生忘れられない。
そんな笑顔だった。
絵を描きたくなった。
今度の個展にはもちろん出さない。
こんな笑顔だれにも見せたくない。
俺だけのものにするために、絵を描きたくなった。
忘れないよう、しっかりと目に焼き付ける。
絶対に描いてやる。