• テキストサイズ

カラフルⅠ【気象系BL小説】

第17章 ヴィンテージ・ワインscene1


一気に駆け下りてると、ドサッと頭上で音がした。


振り返ると潤が転んでいた。


酒なんか飲んで走るからだ。


床に這いつくばってこちらを見ている潤を一瞥すると、俺はまた走りだした。


これで俺は自由だ。



タクシーを捕まえて自宅へ帰る。


車中で何度もスマホが振動した。


誰かわかっているから、見ることもしない。


あんまり煩いから、電源を落とした。


明日、ショップに行って新しいものを買ってこよう。


少し目を閉じた。


10年あいつと過ごしたことを思い出そうとしたけど、なにも浮かんでこなかった。


ただ、あいつが笑ってる顔だけ浮かんできた。


ばかだな…


もうとっくに惚れてなんかない。


そういうのは終わった。


惰性と同情で一緒にいたんだ。


…そう言い聞かせようとした。


でも無理だった。


だって、こんなにも虚しい。


あいつを捨てても、一緒にいても虚しい。


身体中が空洞になったようだった。


前にも後にも進めない。


出口のないこの気持ちが、いつか安らかになる時がくるんだろうか。


今はただ、苦しい。


でも、一緒にいて虚しいより、一人で耐えたほうが、何倍もマシだと今は思う。

/ 1124ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp