第16章 ラズベリーscene2
衣装を脱いだ翔ちゃんはもう、くたくたになってて。
帰りの車に行くとき、俺が支えて歩いてた。
やっぱり貧血の影響もまだあって。
体力がまだついていってない。
誰にも見られないように、スタッフに誘導してもらって車まで行った。
やっぱ総合司会だから、つかまっちゃうおそれがあったから。
そうなったら帰れなくなっちゃうからね。
他のメンバーは、みんなに挨拶しながら帰ってるはず。
うまくごまかしてくれるって話だったから甘えてきた。
頼りになるよ。うちのメンバーは。
翔ちゃんを座席に座らせて、俺も隣に乗り込む。
座ったら翔ちゃんが俺の手をぎゅっと握ってきた。
俺も握り返した。
そのまま翔ちゃんとずっと手を繋いでお互いの体温を感じてた。
家につく頃には翔ちゃんはもう眠ってて。
俺はマネージャーに頼んで、翔ちゃんをおんぶした。
これなら翔ちゃんだって文句はないだろう。
膝への負担だってずっと少ないし。
なんで思いつかなかったんだろ。
部屋の鍵を開けていると、翔ちゃんが目を覚ました。
「智くん…?」
「あ、翔ちゃん。もうちょっとだからね」
そういうと玄関の扉をあけた。