第3章 きみどりscene2
思う存分かずの匂いを吸い込んで、ベッドからそっと滑り出た。
リビングに行って、テレビをつける。
台風情報にチャンネルを回すと、しばらく見入る。
やっぱり東京を直撃するコースになっている。
しばらく、テレビの明かりを眺めていたが、その画面が変化することがなかったので、キッチンへ行く。
冷蔵庫から水を取り出し、飲む。
外はまだ薄暗い。
キッチンの小窓を少し開けて外をみる。
なぜだかこの場所がすきで、スツールを置いている。
それに腰掛け、窓の外をぼんやりと眺める。
目の前にあるコンロに水のボトルを置くと、膝を抱えた。
いつも、ここに座るときは心にぽかっと穴が空いた時。
でも今日は違う。
俺の心はふわふわの丸いボールが沢山詰まっている。
そのボールのひとつひとつは、かずでできていた。
俺を頼ってくれたかず。
俺にキスをくれたかず。
俺に微笑んでくれるかず。
俺の腕で寝てくれるかず。
俺を気持ちよくしてくれたかず。
俺で気持ちよくなってくれたかず。
…かわいいかず。
換気扇を回し、タバコに火を点ける。
喫煙するのも大抵ここで、小窓にいつもタバコと灰皿が置いてある。
タバコでも吸って落ち着かないと、今すぐベッドまで駆け戻ってかずを抱き潰してしまいそうだった。
俺って、こんなだっけ?
紫煙が口から漏れ、苦笑いしている自分に気づいた。
ほら、こんなに浮ついてる。