第16章 ラズベリーscene2
松にぃの運転する車で、千葉の病院まで向かった。
幕張じゃなくて千葉になったのは、翔ちゃんが芸能人だから。
騒ぎが大きくなるから。
千葉まで行くと松にぃが帰るには、遠回りになるのに…
松にぃは無言で運転している。
「ごめん。松にぃ」
相葉ちゃんが後ろから声をかける。
「いいって。気にするな」
松にぃの褐色の腕がギアをチェンジする。
「お前らそんなシケたツラで翔の前に出るなよ?」
「うん…わかってる」
ニノが窓の外をみながら答える。
「翔がこれ以上へこまないように、ちゃんとしろよ。お前ら」
「うん…」
俺はそう答えるしかできなかった。
運転する松にぃを見てると、劣等感しか沸かなかった。
俺には到底できないことを松にぃは軽々とする。
みっともない。
嫉妬だ。
翔ちゃんを軽々と持ち上げていた。
翔ちゃんが安心して身体を預けていた。
俺にはさせてくれないのに。
わかってる。
翔ちゃんが俺にさせてくれないのは。
俺の身体を思いやってってことで。
俺を好きだから、大切にしてくれてる。
だけど。
俺の心臓にくっついた黒い塊は、どんどん大きくなっていった。