第16章 ラズベリーscene2
暫くすると白衣を着た人が入ってきて、翔ちゃんの診察を始めた。
貧血を起こしているということだった。
それ以外は異常はみられないけど、念のため検査を受けるようにということだった。
俺達はそれをじっと聴いていたんだけど、リハの順番がきてしまって最後まで聞くことはできなかった。
翔ちゃんの立ち位置をスタッフが変わってリハは進んだ。
俺は全然リハが頭に入ってこなくて、何度かメンバーにフォローしてもらった。
情けない。
こんな時に仕事までできなくなるなんて。
翔ちゃんがここにいたら、きっと怒ってる。
しっかりしろって。
だから必死にリハを終えた。
全部のリハを終えて前室に戻ると、松にぃが俺たちを待ってた。
「大野、翔は病院だから」
「あ、うん。ありがとう…」
そういうと松にぃは、車のキーを取り出した。
「お前ら送ってやるから、いこう」
松にぃは俺たちを病院まで送ってくれると言った。
「でも、松にぃ…」
「いいから。事務所の車待ってたら遅くなるから。俺の車、8人乗れるし。大丈夫だから」
そう言って、頼もしい笑顔を見せた。