第16章 ラズベリーscene2
松にぃたちが通って行った後を必死で追いかけた。
スタッフに誘導されて、医務室みたいなところに翔ちゃんは運ばれた。
松にぃの腕の中で、翔ちゃんの意識はあったから、ちょっと安心した。
でも翔ちゃんは全部を松にぃに預けきっていて、俺のことを見なかった。
もしかしたら、俺達がいることに気づいていなかったのかもしれない。
松兄の男らしい腕のなかで、翔ちゃんはまるで女の子みたいに見えて。
俺はいいようのない黒い塊が、腹に居るのを感じた。
そんなんじゃないってわかってるのに。
松にぃは、俺よりも20センチ背が高いし、俺よりも男らしいし、翔ちゃんを軽々持ち上げられる腕力もあるし。
こんな叶わない人の腕にいる翔ちゃんを俺は正視できなかった。
なんで抱っこしてるのが俺じゃないの?
今朝、繋いだ手の冷たさを思い出した。
「大野さん、なにやってんの」
ニノがこそこそと声をかける。
「え?」
「早く翔さんのとこ行ってあげなよ」
「だって…」
「だってじゃねぇよ!バカ!」
そういうと、俺の手をひっぱって翔ちゃんの傍に行った。
「しっかりしなよ。大野さん」
悔しそうにニノが言う。
悔しいのはこっちだよ…