第16章 ラズベリーscene2
翌日からも翔ちゃんは忙しい日々で。
俺は空いた時間を使って、なるべく家で料理とか洗濯をしていることにした。
いつも翔ちゃんがしてくれて、俺にさせてくれない。
でも翔ちゃんが居ないから、いまならできる。
やれることをやろう。
俺達は夫婦なんだから。
助けあって生きていくんだから。
そう思うと、心がびっくりするくらい穏やかになれた。
音楽番組のリハの日。
俺と翔ちゃんは一緒に幕張に入った。
毎年夏と冬にここにくる。
夏は翔ちゃんのプレッシャーが半端ない。
だから移動中はずっと隣で手を握ってた。
昨日からなんだか顔色が悪い。
「翔ちゃん…?」
「なに?」
ちょっとぴりっとするくらいの空気。
でもこれも毎年のこと。
決して機嫌が悪いとかじゃない。
仕事のことを考えているときは、いつもこうなるし。
「顔色がね、悪いから。気をつけるんだよ?」
「え?ほんと?」
「うん。昨日から、青い顔してるから。熱はないみたいだから、風邪とかじゃないと思うけど」
「気がつかなかった…」
「だろうな」
もうすぐ本番だから、神経が自分にはいってないみたいで。
通常の仕事をこなすときも、どことなくぴりっとしたものが流れてるし。
そうじゃなかったら疲れきってるか。