第16章 ラズベリーscene2
深夜3時を過ぎても、翔ちゃんは帰ってこない。
俺は久しぶりに一人で酒を飲んだ。
ビールしかなかったら、それを一缶だけ。
缶をもって、キッチンの小窓のスツールへ座る。
窓を小さく開けて、暗い外を見ながらビールを飲む。
タバコに火を付ける。
これが俺の半年前までの深夜の時間の過ごし方だった。
翔ちゃんと暮らすようになってからは、滅多にしなくなったけど。
ここに座るときは、大抵心が満たされてない時。
だから、翔ちゃんがくるまでは、俺の心は満たされてなかったわけで。
自然と顔に苦笑が浮かぶ。
情けないな…
こんなにも翔ちゃんに依存してるなんて。
翔ちゃんの役に立ちたいと、これだけ思ってるのに。
俺、情けない。
淋しいとか思ってる場合じゃないのに。
仕事に嫉妬してる場合じゃないのに。
わかってるのに、俺の心はどんどんささくれだって行って。
でも絶対にこれを翔ちゃんに悟られてはいけない。
翔ちゃんは俺のこと、なんでもわかるけど。
こんな醜い心を抱えてること、絶対に知られたくない。
嫌われたくないから。
ずっと一緒にいたいから。