第2章 ワインレッドscene1
俺はまた、自分自身に言い訳してた。
だって俺は今、熱があって背中も痛くて起き上がれない。
しょうがない。
口移しで水を飲まされたって。
「翔くん。身体起こすのも無理?」
頷く。
「え?だってどうしよう。どうやって…」
とまどう潤の唇に、人差し指をつけた。
「えっ…」
そういったまま、潤の動きが暫く止まった。
「許して…くれるの?」
夢現で、潤が俺のことを必死に看病してるのがわかった。
身体が冷えてくるのがわかると、濡れタオルをやめ、シップを貼ってくれた。
邪な心なく、俺の身体をあったかいタオルで拭い、スエットを着せてくれた。
背中の痛みに喘ぐ俺の身体を起こし、口移しで鎮痛剤を飲ませてくれた。
そして、何度も眠っている俺に呪文を唱えた。
「翔くん、好きだよ」
そう、俺わかったんだ。
こいつは俺が好きなだけで、憎くてあんなことしたわけじゃないって。
俺のプライドを粉々にするためにあんなことしたわけじゃないって。
まだコイツのしたこと、許せるわけじゃないけど、今は。
熱があるから、今はいい。
「早く、飲ませろ」
ガラガラの声で、要求する。
潤は意を決したように、ボトルの水を口に含むと慎重に俺の口元まで運ぶ。
まだ躊躇していたから、俺は目を閉じた。
しばらくすると、唇でノックされたので薄く開けてやる。
待ちに待った水分が俺の口中を満たす。
「もっと」
幾分か、ガラガラがマシになった声で催促する。
何度も何度も。
そうやって俺は潤から水分を受け取った。
「もう、いい」
そういうと、潤はボトルを置いて俺をぎゅっと抱いた。
「痛い…バカ」
そう言うと、少し力を緩めた。
「翔くん…俺…」
「眠い。寝る」
俺は、俺の要求だけを伝えて眠りについた。
ぬくもりをしっかりと握りしめて。