第2章 ワインレッドscene1
どれだけ眠っただろう。
長い眠りから覚めると、体中に汗が纏わりついていた。
いつの間にか着せられたスエットに汗がしみている。
寒い。
歯の根が合わない。
汗が噴き出しているのに、なぜだか身体の芯が冷えている。
薄掛けの布団を引き寄せる。
「翔くん?」
潤の声が聞こえる。
首だけめぐらしてみると、心配そうな顔でベッドの際に座ってこちらをみている。
「潤…」
喉から声が出しにくくて、掠れた声が出た。
「寒い…」
そう言うと、俺は目を閉じた。
「分かった、今布団…」
立ち上がろうとする袖を引っ張った。
「ここに、いろ」
潤の動きが止まる。
「…いいの?俺…」
無言で頷く。
一瞬の沈黙があってから、潤は薄掛けに入ってきた。
俺の頭の下に手を通し、腕枕をすると、俺をそっと包み込んだ。
その温かさに、思わず息を吐く。
ぎゅっとそのぬくもりにしがみつく。
あったかい…
俺は自分自身に言い訳してた。
温かいから、布団に入れてやったんだ。
決して許した訳じゃない。
今は、寒いから。
震える背中を、潤の手がゆっくりと擦る。
「ここ、痛くない?」
そういえば、痛みは半減している。
こっくりと頷くと、ほっとした声が聞こえた。
「良かった」
手は止まらず、ずっと俺の背中を擦った。
「明日ね、仕事オフだって。マネージャーに確認しといたから」
確か取材があったはずだが…
この体調ではどのみち無理だろうが。
「明後日、生あるからゆっくりしてくださいって伝言だよ」
頷くと、背中の手は今度は頭を撫でた。
「俺も明日何もないから。だから…」
その後の言葉が続かない。
顔を上げると、目をそらす。
じっと見ていると、しぶしぶと言った感じで目を合わせてくる。
「看病、させて?」
なんだ、そんなことか。
頷いてやると、一瞬で華がひらいたような笑顔になる。
「ありがとう…翔くん」
そう言うと、その広い胸に俺の頭を包み込んだ。
潤の匂いが鼻孔をくすぐる。
「潤…のど、乾いた」
「あ、うん。水あるよ」
片方の手を伸ばして、ボトルを取る。
「飲ませろ」
「うん。起きれる?」
無言で顔を横に振る。
「え…?じゃあどうやって…」