第14章 ショコラscene1
それから俺達は、お互いを抱きしめてまた眠りにおちた。
夢の中で、おれは江戸時代にいた。
雅紀が遊女で、俺が武家のボンで。
最初は雅紀の容姿が好みで通っていた。
でもだんだん、純粋な雅紀に惹かれた。
雅紀を落籍そうと画策したが、結局親にバレて。
遠国へ行かされることになった。
それも戻ってこれない一方通行で。
もう雅紀に会えないくらいなら死んだほうがいいと思った。
泣きながら雅紀に話すと、とても透明な笑顔で言った。
「では死にんしょうか」
俺達はお互いの手足を結び合って、離れないようにして川に飛び込んだ。
でも俺だけ生き残ってしまった。
雅紀のいない孤独が、俺の身体を引き裂いた。
そして、俺は老人になるまで引き裂かれたまま生きた。
長い長い夢から覚めた。
気づいたら、雅紀が俺を覗きこんでいた。
「…大丈夫?翔ちゃん」
「…雅紀」
「ずっと起きないから心配した」
「そっか…夢だったか…」
「え?」
「いや…夢をみたよ。本物さんの」
「…どんな夢だった?」
「泣きたい夢だった」
そういうと、雅紀は優しく俺の髪を撫でた。