第14章 ショコラscene1
「いつか、聞かせてね?」
「うん…」
そういうと目を閉じてまた俺は眠った。
今度は夢なんか見なかった。
次に起きたら暗くなってて、雅紀の姿がなくて。
家中みたけど居なくて。
不安になった。
まだ本物さんが雅紀の中にいたらどうしようって。
玄関まででると、靴もなくて。
電話をかけても出なくて。
どこを探す宛もなかったけど、とりあえずビルのエントランスへ出た。
外にでたら、ちょうど雅紀がタクシーを降りるところで。
「あれ?翔ちゃんどうしたの?」
両手いっぱいに荷物を抱えてた。
「また、本物さんの夢みちゃった?」
そういって、俺の顔をじっと見る。
「ううん…お前を探してた…」
そういうと、力が抜けた。
「あっ…ごめんね!荷物、取りに行ってたの」
「荷物?」
「うん。あ…あのね。俺…こっちに住んでいい?」
「え?」
「離れたくないから…」
雅紀の瞳の奥に、強い光が見えた。
「うん…いいよ?」
そう言って、荷物を半分持ってやった。
本当は手を繋ぎたいところだが、我慢した。
家につくと、改めてよろしくね、とかわいいことをいうから、また押し倒しそうになった。
ギリギリの理性で我慢した。
暫く我慢が必要な生活になりそうだなと思った。
雅紀を抱き潰してしまわないように気をつけないと。
大切な、俺のだから。
「な、雅紀」
「ん?」
荷物を出している後ろ姿に話しかける。
「もう、おばけなんて怖くないだろ?」
「……ううん。一生こわいから」
「ええ!?俺がいるのに?」
「だから、一生そばにいてね」
「え?」
「離れたらやだよ?」
背中が照れていた。
わかったよ。
いつまでも一緒だからな。
雅紀。
【END】