第14章 ショコラscene1
しかし、今日になってみれば彼女は成仏している。
しかも昨日の夜は俺と一緒にいた。
と、なれば。
…もう分かるでしょ?
俺と雅紀がヤったって、奥さんと先生には丸わかりだったってことで…
俺は頭をどこかに入れて隠れたいほど恥ずかしくなった。
「え?え?翔ちゃんどうしたの?」
雅紀はまだ事態を飲み込めていない。
「…相葉さんのその純粋なところに、彼女も救われたんだと思いますよ?」
先生は緑茶を飲みながら言った。
コーヒーのスプーンにあるハートの砂糖は、奥様からの祝福だったのだろうか。
俺は、その砂糖をすっかり冷めたコーヒーへ落とした。
しゅわっとは溶けなかった。
先生と奥様に見送られて、帰路についた。
車中で、一体どうして俺があんなに取り乱したか聞かれたから、素直に教えてやった。
「じゃ、じゃあ。先生と奥さんにバレバレだったってこと!?」
「うん。玄関入った瞬間にな…」
ふたりとも恥ずかしくて真っ赤になった。
「ま、しょうがないよな。先生だし」
「そうだよね…先生には隠しごとできないね…」
「俺、霊感なくてよかったぁ…」
「あ、ひど…」
「でも雅紀にあってよかった」
「え?」
俺はそれには答えずに、車を家へ走らせた。