第14章 ショコラscene1
「だから彼女は何百年も、相手を探してたのでしょう。彷徨っていたのです」
先生はそういうと、少し目頭を押さえた。
「対話をしてみたんですが、決して悪いものではありませんでした。むしろ、純粋な感情に心打たれました」
手を外すと、先生の目は少し赤かった。
「霊能力者としてあってはいけないことなんですが」
そういうと、少し自嘲ぎみに笑った。
「…彼女の一念は、ただひたすら相手と契ることでした」
「え……ええ!?」
思わず立ち上がった。
その瞬間、繋いでいた手も先生に丸見えになった。
「あ、あああ!!」
俺達は慌てた。非常に慌てた。
「ははははは…大丈夫ですよ…わかってますから…」
先生は堪え切れず笑い出した。
「ええええ!?」
先生が笑い終わって話してくれたことはこうだった。
あの遊女の霊は、相手と契ればすぐにでも成仏できると確信した。
だが、そんな簡単に心中相手がいるわけでもないし。
現実問題として、遊女が取り憑いた身体は、男で。
男が男と契るってことは、そうないわけで。
だからコレはじっくりと言い聞かせて雅紀から出て行ってもらうしかないと判断したそうだ。
むりやり引きはがすには、雅紀の体力が落ちていて危険だったと。
でもあまりにも強い念で、ふらふらと誰かを襲う可能性があったから、一人にしてはいけないと言っていたのだ。