第14章 ショコラscene1
「相葉さんが怯えると、相手に付け入らすだけでなく、他も呼び込んでしまいます」
深刻なのはそこだ、と先生は仰った。
「失礼ながら彼女とか、そういった方は?」
「いえ、俺は聞いてないです。今はいないはずですが」
「そうですか…厄介ですな」
先生は少し考え込んだ。
「あまり一人にしないほうがいい」
「…わかりました。考えてみます」
俺はそう言って暫く黙った。
「櫻井さん、あなたが背負うことじゃないですよ?」
先生は穏やかに笑う。
「いや、背負ってなんか…」
「背負う方はみなそう言います」
「そう、ですかね…」
そういって、頬をぺたっとなでた。
「まぁ、櫻井さんが相葉さんの恋人っていうのなら、止めませんが」
「ちょっ!先生!」
「ははは…冗談です」
そう笑って、少し真顔になった。
「あの女性自体は悪いものではありません。ただ、少し念が強いだけですから。そこは安心してください」
「はい」
「相葉さんを一人にしない方法は、櫻井さんにお任せします。それとも副社長に連絡しておきましょうか?」
「いえ…俺から事務所に伝えます」
「わかりました。注意することは…」
そう言って先生がいったことをメモに書きとめた。
いつも以上に注意することがあって、事態の厄介さを痛感した。