第14章 ショコラscene1
暫くすると先生が次の間に入ってきた。
俺に目配せをして、次の間を横切り廊下を行く。
客間とは少し遠い部屋に通された。
少し深刻そうな顔をして、先生が切り出す。
「相葉さんのご家族は、すぐに連絡取れますか?」
「え?」
「いえ…ちょっと今回は時間が掛かりそうで」
「というと」
「厄介なのが憑いてまして」
女性の、というのは奥様から聞いていたけど。
「いえ、時間をかければ出ていきます。ただ、少し念が強い方でして」
「はぁ…事務所を通せばすぐに家族には連絡取れますけど」
「できれば相葉さんから目を離さないほうがいいです」
「え?そんなになんですか」
「相葉さん、ここのところ寝られてないですな。だから今、寝てもらってます」
「えっ?」
「女性の念もありますがね、ちょうどお疲れでしょう、今。だから余計に波長が合ってるようで」
「そうなんですか…」
そういうことはよくわからないが、とにかく雅紀にはよくない状況のようだ。
「ただ、家族を呼ぶと、相葉は気づいてしまいますよね?今回のが厄介だって」
「そこなんですよね、問題は」
先ほど先生にした目配せ。
あれは、これ以上は雅紀が怖がるからやめてくれってサインで。
先生はいつもすぐに理解してくれる。