第14章 ショコラscene1
「先生、脅かさないでやってくださいよ」
そう言うと、先生に目配せした。
先生はすぐに分かってくれた。
「大丈夫ですよ。相葉さん」
すぐにホッとした表情になる雅紀。
「大阪夏の陣の落ち武者ですなぁ」
「えええ!?まだいるの!?」
「ははは…相葉さんはご存知ないでしょう。未だ、沢山いますよ」
そういうと、先生は雅紀の目に手を当てた。
「少し、横になりましょうか」
そういうと、ソファから俺を立たせて、雅紀を横にならせた。
「櫻井さんは、次の間でお待ちください」
「あ、はい」
大人しく隣の座敷で待つ。
奥さんがお茶を出しに来てくれた。
「櫻井さん、お菓子いかがですか?」
「あ、すいません」
頂いたお菓子をもそもそ頂いていると、奥さんが言った。
「少し面倒そうですわね。今回」
「やっぱりそうなんですか」
「主人がなにかいいましたか?」
「いえ、難しそうなお顔なさってたから」
奥様も視える方らしい。
「面倒ですね…だって女性ですもの」
「ええ…?」
「ま、主人がなんとかするでしょうから。大丈夫だとは思いますけど」
ちょっと曇った顔のまま、奥様は言った。