第13章 マロンscene1
「ね?なんか思い出さない?あの頃の俺ら」
和也が笑う。
「ん…そだな」
そういうと和也はキッチンに立って、グラスとワインを持ってくる。
「今日ね、大野さんが言ったの。ちゃんと翔さんに気持ちを伝えるって」
ワインを開けながら和也が言う。
「笑っちゃうんだよ。あの人。自分の気持ち、悪いものだって思ってたんだもん」
「俺だって、そう思ってたよ?」
「え?」
「お前にこんな感情持ってんの、失礼だと思ってたもん」
「潤…」
「普通、そう思うだろ」
俺はそう言うと、ワインの瓶を和也から取り上げた。
なかなか開かなかった蓋を開けて、グラスに注いでやる。
「…なんで潤がやるとすんなり開くんだろ…」
「しらねえよ。お前のほうが握力あるのに」
「潤がなさすぎるんだよ…」
そう言われて笑うしかなかった。
グラスを取り上げると、目の高さまで掲げた。
「大野さんと翔くんに」
おどけて俺が言うと、和也も倣った。
「大野さんと翔さんに」
グラスを合わせる。
赤ワインのほろ苦い風味が喉を通って行く。