第13章 マロンscene1
和也は紙袋の中を開けた。
「うわ、綺麗」
「これ、キーリングなんだ」
「へー凄い。ブルガリだぁ」
「俺んちの鍵に使えばいいかなと思って」
「……ありがとう」
「この前のツアーんとき、ずっと傍にいてくれて、ありがとうな」
「……え?」
「和也がそばに居てくれたから、心強かった」
「潤くん…」
「ホント助かったよ。ありがとう」
俺は改めて頭を下げた。
「ちょ、ちょっとそんなことしないでよ…!」
「いや、本当にそうだったから。ちゃんとお礼言わないとって思ってたから」
「俺は、自分でそうしたかっただけだから。そんな感謝しないでよ」
「俺も、こうしたいからしてるの」
そういうと、和也の目を覗きこんだ。
暫くそうやって見つめ合った。
和也がふふっと笑ったので、俺も笑った。
「ありがとう、潤くん」
「ありがとうな、和也」
お互いお礼を言い合って終わりにした。
その後、ずっと和也はキーリングをおもちゃにして遊んでた。
俺はそれをずっと眺めていた。
幸せだった。
机の上には、昼間とんできた花びらがまだあった。